当ブログでも以前の記事「私たちに日本国憲法を改正する「資格」はあるか」でこの問題について取り上げましたので、今回は選挙について気がついたことを書きたいと思います。
与党について
まず、今回の選挙で与党、特に自民党について私が最大に注目している点は、やはり過半数の議席を確保できるかどうかです。
いきなり結論から述べますと、過半数の確保は出来るだろうと考えています。理由ですが、自民・公明の支持そのものよりも野党の自爆が目立つからです。今年の5月に野党は環境委員長の川口順子氏を解任に追いやったり、会期終盤での安倍総理に対する問責決議案可決など、なんとか与党に対してダメージを与えたいという行動が目立ちました。しかし、国民の目には単なる国政の妨害にしか映らなかったようです。自民・公明の面々はさぞかし愉快だったでしょう。
さて、衆参両院で安定政権となった後、国政は安定するでしょうか。私にはそうは思えません。なぜなら、安倍内閣はいくつもの不人気政策に着手しなければならないからです。アベノミクスとか3本の矢と言われる現在の政策は、大雑把に言ってインフレ誘導策と自転車操業的な経済成長戦略からなっています。
我が国の抱える大問題の一つは対GDP比で200%を超える膨大な公的債務の存在です。この水準は世界の歴史をひもといても戦争以外ではなかなか見出せない高水準です。常識的にはとっくに財政破綻してデフォルト(債務不履行)を宣言していなければならない状態なのですが、国債の95%ほどが国内の債権者の手にあることなどから、未だ破綻を免れています。しかし、これは我が国がデフォルトしないということではなく、まだいくらかの余裕があるということに過ぎません。
歴史上、過剰な公的債務の解決には以下に挙げる8つの解決策があるといわれています。
増税
歳出削減
経済成長
低金利
インフレ
戦争
外資導入
デフォルト
このうち頻繁に採用されてきた手段がインフレでした。なので、アベノミクスの中に物価上昇目標という名のインフレ誘導策が盛り込まれているのは、至極当然です。
問題は、インフレ誘導策だけでは最終的な解決にならないという点です。インフレが進むと、物価に賃金の上昇がついて行けなくなり、購買力の低下による内需の減少が引き起こされるからです。
そこで、経済成長策を同時に行わなくてはいけませんが、そのための起爆剤としての公共投資を行うということは、つまるところ公的債務で経済成長をファイナンスするということに他なりません。これではヘビが自分のしっぽを噛んでいるようなものなので、あっという間に限界が来るでしょう。しかしながらそれ以外の方法(規制緩和・人材育成・労働力の流動化など)で経済成長を目指すことは、短期間で成果が出ず、わかりにくい政策だと思います。
したがって、公的債務の削減のためには、出来るだけ早く歳出削減と増税という不人気な政策に着手しなければならないのです。
不人気政策を実行するのですから、その結果として与党は国民の支持をある程度失うことになります。これを傍観もしくは我慢していられないのが、当選回数の少ない若手・新人議員ではないかと思います。地元の支持者達から「選挙で勝たせたんだからもっと生活を良くしてくれ」という有形無形の圧力に経験の浅い議員達は抗えないことでしょう。国家の危機に対処するため、不人気政策を果敢に実行しようとする安倍内閣に立ちふさがるのは、その時多数を占めているはずの自民党議員達ではないかと考えています。
野党について
現時点の状況を見る限り、野党はなんだか迷走状態であまり有効に機能していない様子です。民主党はすっかり機能不全に陥っている様子で、さらなる出血によってしか自己改革できないのかもしれません。特に輿石東氏を未だに重鎮として扱っているようでは、支持の回復は望めないと思います。
後出しジャンケンのようで恐縮ですが、4年前に民主党が大躍進する直前、とある機関の方に意見を求められたことがありました。その時は「民主党のマニフェストは国民の支持を集めて政権を取るだろう。しかし、マニフェストの中身は実現性に乏しいものが多いので、そのうち破綻するだろう。特に外交・防衛面では政権を取って半年から1年の間に大きな失敗を犯すだろう」と答えました。当時はブログなどもやってなかったので、この話は数人に話しただけでしたが、結果は今日までの通りです。
政治的な理想論と、現実のサバイバルには大きな隔たりがあるということなのですが、とにもかくにも民主党は大きな代償を払いながらもそれを経験しました。ですからここでもう一度、生まれ変わるための苦しみを乗り越えれば国政政党として立ち直れるはずですが、今のところそういった雰囲気は感じられません。このままでは消滅するより道はないでしょう。
日本維新の会については、昨年10月の記事「維新の会の「維新」って?」で、失速することを予測していましたので、現状について何の印象もありません。
生活の党については、恐らくみっともないことになるだろうと思いますが、小沢一郎氏は名うての選挙巧者なので、想定外の一打を放つかも知れません。しかし、それが民主主義そのものにとって良いことなのかは何とも言えません。
あと、野党で取り上げたいのは日本共産党です。この党は、野党の中でも異彩を放っているというか、ある意味野党らしい野党だと思っていました。しかし、今回の選挙の争点で憲法改正が取り上げられている以上、護憲の立場で戦うことになるでしょう。それはそれで良いのですが、日本共産党が護憲で戦うためにはあるケジメをつけなければならないと思います。それは1946年の第90回帝国議会で日本国憲法の採択がされたときに、日本共産党がそれに反対したという事実です。67年前に反対した憲法がそれから一字一句も改正されていないのに、今はそれを守ると主張する矛盾。
時代の変化と共に考え方を変える事、それ自体は間違いではありませんが、明確な説明が求められます。
さて、結果はどうなるのか、それは私たち有権者の選択次第ですが、それぞれ自分の1票は大切にしていただきたいと思います。月並みなことしか言えませんが、良い政治を求めるためには投票する手間と政策を知る手間を惜しまないこと、それ以外に手段はないのです。