2012年01月25日

道南の観光振興を考える(1)

 先日、私の両親が経営する飲食店に三平汁についてのアンケートが届きました。北斗市の新たな名物として三平汁をアピールしたいというものです。2015年度の北海道新幹線開業まであと3年ほどとなりましたが、地元は観光振興を強く意識し始めたということでしょう。こうした観光振興にまつわる主張は以前からもありましたが、私が現職の議員だった頃からいろいろと疑問に思っていたことを書きたいと思います。

長野新幹線 まず取り上げたいのは、札幌延伸を強く反対もしくは憂慮する意見についてです。これは、札幌まで新幹線が延伸したら新函館駅[仮称](以下、新駅と称します)は通過駅となり、乗客は皆札幌へ行ってしまう、新幹線効果はなくなるというものです。類似した意見としては、新駅開業時点でも単なる乗り継ぎ駅になるから同じく新幹線効果は見込めない、というものもあります。
 この意見は非常にナンセンスで強く反感を覚えます。なぜか、この意見は新幹線に乗ってやってくる人々の行く手をふさげばそこで降りざるを得ないから地元にお金が落ちるという話になってしまうからです。来訪者の目的にかかわらず行く手をふさげば自分達の方に向くという考え方は、来訪者に対して実に失礼なものです。それぞれの来訪者は皆それぞれに目的があるのですから、立ちふさがったところで不愉快にさせるだけで目的の地に向かっていくでしょう。新駅で降りてほしければ行く手を邪魔するのではなく、そもそも地元に来てもらえるように自らの街や土地を磨き上げることが肝要なのではないでしょうか。

 次に、地元北斗市の観光資源開発についてです。以前から、きじひき高原を開発・整備して本州から観光客を呼び込もうという意見があります。これについては、まず無理だろうという印象を私は持っています。確かに、函館山と大沼を一望できるきじひき高原からの眺めはとてもすばらしいと感じます。しかし、東北・北海道新幹線沿線から行ける観光地にはきじひき高原と同じくらいかそれ以上の大パノラマはいくつもあります。きじひき高原の展望はすばらしいものではありますが、それほど抜きん出たものではありません。ましてや、そこにアルパカを放牧してふれ合えるようにしたら首都圏からたくさんの観光客を見込めるという主張もありましたが、現実離れも甚だしいと言わざるを得ません。アルパカ牧場なんて首都圏周辺にいくつもあり、アルパカを触るためだけに新幹線に乗って首都圏の人々がやってくるなどということは考えられません。

 また、地元特産のお土産を開発しようという意見もかなり以前からあり、地酒だアイスだといろいろ取り組んでいました。その一部に私も関わったことがありますが、その実態は予算が付いたから何かしなければならないという話で、これは順序が逆だと感じていました。
 アイスクリームを開発しようとしているのに、委員会のメンバーに飲食店や食品を扱う人がほとんどいない、おまけにチェーンスモーカーが多くて、試食をさせてもかなり味を濃くしてはっきりさせないと、味がよくわからない様子でした。カネが付いたから事業を立ち上げてメンバーを集めるとこうなるという典型的な委員会でした。
 また特産品開発においてよく見かける失敗として、マーケティングリサーチをしないという点もあります。観光客がお土産を買っていく時に選ぶ基準は何か考えてみると、ひとつは全国的に有名な特産品である場合。ネームバリューが購入時の安心感につながり無難な選択をしていると考えられます。もうひとつは、自分自身が興味を持った場合。無名なものであっても、自ら食べてみたい、体験してみたいという気持ちが小さな冒険心を生み出すと考えられます。北斗市においては、全国的に有名な特産品は特にありません。であれば、小さな冒険心をくすぐるものでなくてはいけません。しかし考えてみて下さい。自分の趣向に合っていないものを果たして選ぶでしょうか。
 仮に新幹線に乗ってやってくる観光客は首都圏の人々であると想定し、新駅で特産品として食べ物を扱うことを考えたとき、地元の私たちが美味しいと感じるものと首都圏の人々の趣向は一致しているでしょうか。私の経験からすると、両者の食文化にはかなりの違いがあります。自分達の自慢できるものを提供することは大切ですが、手にとって検討するのは自分達ではありません。見た目だけで美味しいかもしれないと思わせるためには、相手の趣向にも合わせなければなりません。そのためのマーケティングリサーチなのです。
 ところが、こういった観光振興を訴える人々の中で、ちゃんとリサーチをしている人は少数派に感じます。観光客を呼び込みたければ、そもそも観光とは何か、ということを知らなければならないのに、自ら積極的に観光をせず自分の中の固定観念にとらわれていると見える人が多いのです。相手が何を欲しいのか分からずに、適切なモノやサービスを提供できるのでしょうか。

 観光客を呼ぶイコール全国にPRして集客するという固定観念も問題です。前述のきじひき高原をまた例に挙げますが、私の感覚ではきじひき高原は全国レベルの観光資源ではありません。ですが、それで良いではないですか。地元の人々がゆっくりするための観光もあってよいのです。道南の特に北斗市周辺での全国規模の観光資源としては、函館と大沼が2枚看板だと感じています。その2つの観光地がたくさんの観光客を集めればよいのです。そうして売上が上がれば、その効果は北斗市にも波及します。経済圏としては函館市と北斗市はつながっているのですから。そして、仕事に疲れた地元の人々がきじひき高原でゆっくり休んだり楽しく遊んだりすればよいのです。

 北海道新幹線も見据えた道南の観光振興策については、次の機会に取り上げたいと思います。
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posted by しらいし at 15:44| Comment(0) | 観光
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