2013年08月16日

8月15日という日に寄せて(2) 〜今後の国家経営と安全保障 情報と経済・外交〜

 この日になると毎年恒例なのが、ニッポンの平和を考えるという類のテレビ番組です。例に漏れず今年も放送されていますが、この手の番組を視ていつも感じるのは議論が単純であるということです。
 パネリストのひとりが、日本は軍事力で守ることが出来ない国土なのだ、と述べて軍事力を否定すれば、別のパネリストは軍事力を軽視してはいけないといった具合です。
 歴史をひもとくと、軍事力のみで安全を確保することはできないということの事例をたくさん見つけることが出来ます。同時に経済力のみや外交力のみでも安全を確保できなかったケースを見出すことが出来ます。何かひとつの要素に話を絞るのは、自分も聞いている相手もわかりやすいかも知れませんが、世界の各国はわかりやすさで競い合っているわけではありません。あらゆる要素や手段は互いに関連し合っており、状況に応じてそれぞれの重要度が変化するものなのです。
 さらにきちんとした話をしますと、安全保障を論じるに時間という重大な要素を抜きにすることはできません。強大な軍事力を持てば確かに戦争を挑まれる恐れは少なくなります。しかしそのために経済力が減じられるとなれば、いずれは危険な状態に陥ります。また、外交力で一旦は平和を確保できたとして、自らに関係する各国のなかに話が通じない国が生まれてしまったらどうでしょう。関係国がいつまでも話し合いだけで物事を解決してくれればよいですが、未来永劫変化しない国も個人も存在しません。変化が訪れるのは時間の問題なのです。
 ですから、安全保障を考えるためには、

1.どのような政策を採用して実行するのか
2.その政策はいつまで通用する見込みなのか、いつまで継続するのか


の2点が大切です。どのような政策を採用するかを判断するには、正確な彼我の情勢分析が不可欠です。自国を取り巻く状況はどうか、自国の国力はどれほどあるのか、他国はこちらをどう分析しているのか、などです。そして、情勢や使える手段が分かれば、それを実行に移すための準備をし意志を固めることです。
 次に、いつまでその政策は使えるのかという点は、将来の情勢変化を見込むことです。また、いつまで継続するのかということは、まさに未来を予定することです。永遠に続けられる策などないのです。

 では我が国は今後どうしたらよいのか、以下に私案を述べたいと思います。

●情報(インテリジェンス)
 まず、情報(インテリジェンス)機関の拡大・整備を進めます。60年以上前に建国したイスラエルは国土が小さく入り組んでいるために、インテリジェンスを国防の要としました。我が国は長大な海岸線と多数の島嶼を持ち、防衛しにくい国土でもあります。正確なインテリジェンスを元に機動的に防御しなければなりません。
 また、インテリジェンス機関が集めるのは軍事情報だけではありません。軍事力も含めた国力を形作る重大な要素は経済力です。これを守り成長させるために、経済情報をどん欲に集める必要があります。
 そして、外交もインテリジェンスがなければ何も出来ません。インテリジェンスは国家の五感そのものなのです。

●経済と外交
 次に経済と外交についての提案です。経済は国を支えるというだけでなく、諸国との利害関係を作り出します。たとえ敵対的な関係であっても、経済的な利害が絡み合えば、互いの感情にかかわらず軍事衝突の可能性は減じられることを歴史は教えています。外交については経済とも軍事とも強い関連性があるので、ここでは経済と絡めて述べることにしました。
 最近のトレンドはTPPについてでしょうが、私の提案は日本海側の開発を進めて日本海沿岸各国との交易を増大させることです。特にロシアとの関係を深めます。ロシアは今までのところ中国と相成れない関係になっています。安全保障とはバランスオブパワーの成果物である以上、敵の敵は味方というほどではなくとも牽制するために利用できます。もちろんこれは相手にとっても言えることです。
 具体的にどう関係を深めるかその方法ですが、北方領土問題についてある程度妥協することで極東シベリアと北極海航路の開発に絡むのです。もちろんアメリカも引き込みます。北極海航路は長期にわたり莫大な利益をもたらすことでしょうが、そのためには日・米・ロが協調せざるを得ない関係を構築するのです。
 北方領土問題について妥協すると述べましたが、具体的には歯舞・色丹の2島プラス国後の一部返還で合意するということです(面積2等分案で、国後の全てと択捉の一部ならなお良いですが、ここではあまり欲を出さずに国後の一部としておきます)。これは我が国の世論を大きく揺さぶることになるでしょうが、反対に4島返還ならロシアの世論に激震が走ることでしょう。なぜなら、ロシアの歴史はモスクワの小さな城塞都市から始まる領土拡大の歴史であり、理由もなく領土を失うということは政権を揺るがす程の大事件なのです。しかし、ロシア人もバカではありません。国家経営上の十分な合理性があれば領土の交換や境界の策定などに合意することは近年幾度も見られています。そして十分な合理性とは、我が国との関係を正常化し国後島の上で陸の国境で接することができるという点です。我が国にとっても半世紀以上無かった陸の国境を持つことになります。この国境沿いに経済特区を設けて日・ロ両国の経済活動の接点とするのです。この経済特区は北太平洋とオホーツク海に面し、北は北極海航路、南は太平洋沿岸と日本海への航路に接続します。
 台湾、トルコとの関係強化も大切です。台湾は隣国であり親日国でありシーレーンにもまたがっているので重要なのは当たり前ですが、トルコもまた将来の我が国にとって大切な国です。なぜなら、21世紀の中盤はアフリカ大陸の権益が極めて重要になることは明白ですが、我が国がアフリカに入っていくための玄関のひとつがトルコであろうということなのです。トルコは大変な親日国であるだけでなく、古代からヨーロッパとアジア、北アフリカに接する文明の十字路であり、ギリシアの都市国家も多数存在していました。そんなトルコには我々の知らないアフリカへのルートがあるはずです。
 さらに教育の話にもなりますが、アフリカで活躍できる人材の育成のため、フランス語教育にも力を入れなければなりません。アフリカ大陸の諸国でそれなりの地位を持つ人々の公用語はフランス語です。広大なアフリカ大陸に権益を求めようとするなら、フランス語ができるビジネスマンや役人はいくらいても足りないくらいでしょう。

8月15日という日に寄せて(2) 〜今後の国家経営と安全保障 軍事〜に続きます。
posted by しらいし at 19:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/72563508
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

人気ブログランキングへ